

「終身雇用は守れない」で今後どうなる?
まず、これから終身雇用を採用する会社が少なくなっていくのはほぼ間違い無いでしょう。
技術革新により、事業や業界に必要な人数やスキルが変われば、必要な人材、スキル、人数が変わります。
例えば、読者の方々の会社にも、少し前までは人が入力していた仕事だけど、今はパソコンが勝手にしてくれる仕事がいくつか思い浮かぶと思います。
そのような時にもともとその仕事をしていた人が、他にする仕事があればいいですが、やる気がなかったり、能力がなかったりすると、新しい仕事を覚えられませんし、そもそも他にやらせる仕事がなかったりします。
そうなると経営的には、必要なくなった労働者をクビにすれば、コストカットになり合理的です。ですが、労働者側からするとクビになると生活できなくなるので困ります。
そのような労働者を助ける仕組みが終身雇用です。ただ、トヨタの豊田社長が先日おっしゃっていたように「企業にインセンティブがあまりない」です。終身雇用は労働者を助けるための仕組みなので、企業にはあまりメリットがないです。
高度経済成長期以降、日系企業が競争力のあった頃は終身雇用を維持できましたが、今はそれほどの余裕はないです。単純に終身雇用でない外国企業と、終身雇用を採用している日系企業で競争したら、コスト競争力があるのは終身雇用でない外国企業ですので。
ということで、今後終身雇用を採用する企業は少なくなるでしょう。
終身雇用と年功序列、年金、新卒一括採用はセット


終身雇用は日本の社会システムの一部を構成しています。ですので、「終身雇用が守れない」は終身雇用が守れないだけでは終わりません。
「新卒一括採用で企業に入り、年功序列で昇給し、終身雇用で定年後は年金で暮らす」というのが、日本人の多くが選択しているライフプランです。本記事では取り上げませんが、日本の教育や結婚や住宅ローンなども終身雇用を前提としている面があり、終身雇用の崩壊は日本人の生活に非常に大きな影響を持ちます。
例えば、生姜焼き定食を注文したとします。生姜焼き定食は、生姜焼き、ご飯、味噌汁、サラダ、ドリンクから構成されます。ここでサラダがなくなったとします。
サラダがなくなるとビタミンが足りなくなりますので、例えばドリンクをコーラではなくて野菜ジュースにするとか、生姜焼き定食はなくて野菜炒め定食にするとか、味噌汁を野菜スープにする必要が出てきます。
このように、セットで構成されるものは1つが変わるとそれで解決ではなく、それに合わせて他のものを変えたり、セット自体を変更する必要が出てきます。
終身雇用も同じで、終身雇用がなくなれば、それとセットになっていた、年功序列や年金、新卒採用などにも影響するわけです。
年功序列は?


終身雇用の崩壊によって年功序列も同じように崩壊します。終身雇用は毎年同じような人数を採用して、みんな同じように勤務してスキルを身につけていくことを前提としています。
終身雇用がなくなると、いろいろな年齢、職歴の人たちが入社したり、退社したりを繰り返します。そのような時に勤続年数のみで給料を決めてしまうと、仕事ができない3年目の若手の方が、仕事ができる1年目の転職者(他社で10年の経験あり)よりも給料が高いというような状況も出てきてしまいます。
今までは労働者の出入りが少なかったので、歪みは起きませんでしたが、終身雇用の崩壊によって、いろいろな背景の労働者が一緒に働くようになると、年功序列は維持できません。
こうなると、仕事の量や時給で労働者を管理するしか、不公平感を生まない方法はないです。ですので、終身雇用の崩壊とともに、年功序列が崩壊し、仕事の量や質で給料が払われるようになると思います。若い人には嬉しいですね。
年金は?


年金も終身雇用とセットです。終身雇用で60歳とか65歳まで働いて、定年退職したら収入がゼロにならないように、年金で生活できるようにするというセットです。
ですので、終身雇用が崩壊すれば、年金もそれに合わせて制度が変わる可能性があります。例えば、終身雇用の崩壊によって、「スキルがないけど、会社にいられた、けど今後新しく仕事を覚える気はないような40代、50代の人」がクビになったとします。
そして他の会社でも雇われなかった場合、「40代、50代で年収ゼロ」のような人たちがたくさん出てきてしまいます。このような時に、今のままの65歳から支給の年金では到底まかなえません。
65歳までは終身雇用で定年まで働くだろうというのを前提にしているのが、今の年金制度なので「40代、50代で年収ゼロ」のような人たちが多く現れるようになれば、制度自体も変えていかないとバランスが取れないわけです。
現在、年金の支給開始時期を後ろ倒しにしようという動きが強いですが、前述の通りむしろ前倒しにしないとバランスが取れなくなります。
ですので、むしろ年金の支給開始時期前倒し、もしくはベーシックインカムの導入などが終身雇用崩壊後のバランスを取るための対策となります。もちろん財源の確保は課題ですが。それができないなら生活保護受給者が増えることになりそうです。
新卒一括採用は?


新卒採用も同様です。終身雇用を前提としているからこそ、日系企業はイチから面倒をみて無知な新入社員をスペシャリストまで教育してきました。終身雇用が崩壊すれば、他の会社から経験者を採用することができますので、わざわざ自社でコストをかけて育てる必要はありません。他社が育てた人材を引き抜いた方がコスパがいいです。
終身雇用崩壊後は、中途採用やスポット採用が増えるでしょう。事業・業界は高速で変化し続けますので、会社に必要なスキルや人数は日々変化します。
ですので、必要な時にスポットで採用して必要なくなったら解雇する、中期的に人材が必要なら即戦力の中途採用をする。もちろん、長期的な人材を育てたいなら新卒採用もありですが、今みたいに新卒採用メインではなくなるでしょう。
こうなると、逆に、安定を求める新卒層から「終身雇用を保証する会社」に人気が出るかもしれないですね。逆にそれを武器にして人手不足を補う企業も出てくるかもしれません。昨今の大学生就職希望先の公務員人気もこのような背景があるのかもしれません。
『終身雇用は誰にメリットがあるか?デメリットは何か?』
『とりあえず「仕事は3年続ける」べきか?すぐに辞めるべきか?』
『ルールを決める側に有利なルールが作られる【じゃあどうするか?】』
終わりに
最後までお読みいただきありがとうございます。読者の方々にとって有益な記事になっていましたら幸いです。
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